北京に電話して!

2009年07月16日

 北京に電話して!私はけっこうなクレーマーである。電力会社、バス会社、小包を扱うところ(うまく日本語が出てこない)、タクシー会社、パソコン関係、その他もろもろに電話を入れて「おかしんでないかい」と文句を言ってきたこわいおばさんである。
 ある友人が「クレーマーは社会をよくするために必要なんですって」というのを聞いて、別に肩書きに「クレーマー」がついているわけではないが、私は、「そうか、社会をよくするためにやっているんだ」と変な自信を持ってしまった。クレームを言う人は、みなそう思っているはずだが、「こんな理不尽はおかしい、これを直してほしい」と関係者に訴えるのだ。
 今年初めのことだが、フランス人友人Nが「アポロ」チョコレートが好きなので、たくさん買ってフランスに送った。家の近くの郵便局に行くと、やさしい事務員が、「お手紙を入れるならこの方法がいいですよ」といろいろ教えてくれた。しかし、いざ、送ろうとしたときに、「あの、ちょっと調べてみたんですが、最近、条約が改正されてフランスには食品を送るのが禁止になっています。でも、直接、大使館にお電話して相談してみてください」と、東京のフランス大使館の電話番号を書いた紙を渡してくれた。
 私は家に帰り、大使館に電話した。とてもきれいな日本語を話す人が応対してくれた。日本人か、あるいは日本語が上手なフランス人か。
 私が小包の件を話すとその人は、事務的に「経済部が11月まで東京にあったのですが、北京に移りました。ですから、北京に電話して聞いてください」と言った。私は、頭に血がカーっと上り「えー、私はチョコレートのことで北京に電話なんかしませんね」と言って電話を切った。チョコのことで電話をしているのに、もう関係部署はないので、北京に電話してくれというこの神経、どうなってんだろ。大切な友人に送る小包であるが、そのために北京にまで電話なんかしない。よし、没収されてもいいから小包を送ろうと思い、また郵便局に行った。
 
北京に電話して!


 私は、大使館員とのことを話し、「とにかく送ります」というと、郵便局の人たちは「でも・・・」と不安げだ。私が「送ってはいけないのに取り扱ったら、みなさんに罰則が科せられますか?」と聞くと「そういうことはないのですが、決まりですので」と言うので、私は、あきらめてその郵便局を出た。やさしくしてくれた人たちに迷惑をかけたくなかったので、あとで中央郵便局から送ろうと思った。
 近所に住んでいるフランス人Mに電話して相談する。彼は確か、最近、フランスからフォアグラが届き、それをみんなで食べた。大使館員の話をすると「ほんとにバカだよなあ。何かに隠して送ったらいいよ」と“アドバイス”してくれた。
私は、家に帰り、まだ「北京に電話して」に興奮していた。全国紙の読者のページに投稿しようか、あるいは、頑張ってフランスの新聞に投稿しようか、こんなことを考えた。
 大使館のウエブサイトを開けて、コンタクトをとれるか調べてみると、「質問コーナー」みたいなのがあったので、怒りをバーっと書きまくった。
 大使館員は、外国に電話をするのは日常的なことかもしれないが、しかし、それを差し引いても「北京に電話してくれ」はあまりに非常識。もっと心のこもった対応をしてほしい。在仏日本人の間でも東京のフランス大使館員の応対の悪さは有名である。あまりに事務的すぎる。しかし、それでも日本人はフランスが大好き。そういった日本人の相談にも心のこもった対応をしてほしい・・・とメールを送った。
北京に電話して!


 それで少しは溜飲が下がったのだが。2,3日後、このことをすっかり忘れていたら、ご丁寧にもフランス大使館から返事がきた。「不適切な対応で申し訳ありません」と短いメールだったが、結論は、贈答品なら食品でも送っていいということだった。それを読んだ私は一人で「だろっ」。チョコレートを送ってダメなんてことはないんだよ。まじめすぎたなあ。
 しかし、「北京に電話して」はカチンときたが、このブログのタイトル名にしようかなと思ったほど、インパクトはあった。


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Posted by ダイアン・M at 11:20│Comments(4)私事
この記事へのコメント
ダイアンさん、はじめまして。U.P.です。
初コメントです。
理不尽に対して、きちんと物申す態度すばらしいです!和を尊ぶ我が国ではなるべくもめ事はおこさないことが良しとされていますが、長~く外国で暮らしていると「言うべきことは言う!!」ってことも大事だと気づかされますよね。
Posted by U.P. at 2009年07月16日 12:43
U.P.さん
コメントありがとうございます。声を出すというのは、ほんとにドキドキするんですが、「ここで言わないと」と思っちゃうんですね。勇気を出すことは大切ですね。
Posted by ダイアン・Mダイアン・M at 2009年07月17日 01:06
このコラム、むちゃくちゃ面白かった!
ダイアンさんのまっすぐ(まっとーばー)な態度には尊敬(^^)まぁ、お役所仕事はそんなもんです★マニュアル通りに仕事をこなしていると、その滑稽さに気付かなくなるんですネ!気をつけよう〜っと。いや〜しかし・・面白かった。当分「北京にかけて」のフレーズが私の心にも残るでしょう♬
Posted by 本村ひろみ本村ひろみ at 2009年07月17日 23:51
本村さん
「北京に電話して」は、最初はむちゃくちゃ怒ったけど、あとから考えたらすごく笑える話ですよね。言われたときは、目が点になりました。
Posted by ダイアン・Mダイアン・M at 2009年07月18日 03:22
 
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