le cafe sympa

　実家でテレビを見ていたら、隣に座っていた父が、テーブルの下からごそごそと何やら出してきた。そして、私に「今、こんなの読んでいるんだ」と、少し自慢げに見せた。なんとハルキ・ムラカミの「１Ｑ８４」ではないか。私は、本と彼の顔をかがわるがわるみながら「うんじゅ、意味わかるわけ？」と聞いた。
　「あまりわからないど、これを読まないと（世間に）ついていけないからなあ」と言う。
　世間って、つまりあなたの世間（仲間たち）って、模合、体操、カメラ、犬の散歩で出会う人たちじゃない。模合なんて、７０を少し過ぎた父が一番若くてあとは７０代後半から８０代で、毎月、自分が取ったのも忘れて「ワシの番じゃないか」と騒ぐ人がいるっていうじゃない。
　「パパ、世間についていくどころか、この本読んだら飛びすぎちゃうよ」と私は答えた。
　数日後、妹の車に乗っていたら、運転席の彼女が「Ｙ（父のこと）の読んでいる本知っている？」と聞く。「あー、１Ｑ８４ね」と答えると、彼女は「意味わかるのかしら」と不安そうに言った。父は、話題沸騰の本を、おそらく子供の誰もがまだ手をつけていない本を自分が先に読んでいるというのが少し誇らしく、実家に帰ってくる娘たちに見せたかったのかもしれない。
　昨日も例の本を読んでいたけど、まだ半分もいってない。「いろいろ並行して読んでいるから」と父は言っていた。
　



　ちなみに母が今読んでいるのは（というか、最近買ったのは）、山崎豊子の「運命の人」。４巻まであるらしく、彼女は１，２巻は持っている。「３，４巻、誰か見たら買っておいてね」と誰かに頼んでいた。
　私が今読んでいるのは、ムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンの「誠実な詐欺師」。ムーミン展で買った。これを読みながら、檀ふみのエッセイや野中広務の本を並行して読んだので、まだ終わっていない。
　あー、読書の秋だ。