アラーキーと陽子の愛

2009年03月03日

アラーキーと陽子の愛


 「物想いに沈んでいる表情が良い、と言ってくれた。私はその言葉にびっくりして、じっと彼を見詰めていたような気がする」
 書き手(作家)は、出だしの1行でその作品が決まるというが、読み手も最初のフレーズを読んだだけでその本との相性が決まると思う。パリのブックオフ(あるんです)の2ユーロコーナーで「物想いに・・・」という1行を読んだ時に、荒木陽子著の「愛情生活」は、その後何度も読み返す私の愛読書になった。
 作者は写真家、天才アラーキーこと荒木経惟の妻、荒木陽子。残念ながら陽子さんは1990年に子宮肉腫という病気で42歳の若さで亡くなっている。
 冒頭の出会いから、結婚、新婚の日々、旅行、ふだんの生活などがつづられている。この本の全編に流れるのは陽子さんの夫への「好き」という思いだ。「愛」と言えばそれまでだけど、「彼からのプレゼントを思い出すのは楽しい時間」「彼と一緒に生きる事が私にとっての旅なのだ」と、結婚生活を長く続けていても変わることなく夫・荒木経惟という男にずっと恋している女のエッセイだ。ひとり身の私がうらやましがるのはもちろんだが、それよりも気取りのない描写が与えてくれる幸福感が心地よい。
 1985年に同名のタイトルで出された本を再構成した復刻版で、97年に出版されている。本の帯に「私の人生は陽子との出会いからはじまった」(アラーキー)とあり、夫のあとがきにもじーんとくる。
 左のひまわりいっぱいの「東京日和」(筑摩書房、1993年)は、先日リブロ(那覇市久茂地、パレット内)で買った。夫妻の共著だ。陽子さんが「思想の科学」に連載していたエッセイをまとめたものが中心になっている。
 「たった3回の連載だったけど、ヨーコの最後のエッセイを本にしてあげたかったのだ」とアラーキーはまえがきに書いている。2冊とも写真が満載、そしてアラーキーのヨーコへの愛があふれ出ている。


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Posted by ダイアン・M at 02:24│Comments(2)私の本棚
この記事へのコメント
ダイアン・Mさま

こんにちは^^、Mです(姓はSだわ。。。笑)。先ほどは失礼しました。
改めて遊びにきました~。
ご紹介の書籍、私の心の琴線的2冊。
思い出がいっぱい、です。
ブログ、楽しみにしてますよ^^。
Posted by RIKO at 2009年03月03日 19:22
RIKOさま、ありがとう。私も仕切りなおしのコメントです。RIKOさまにもこの本に思い入れがあったとは知りませんでした。陽子さんの書く、誕生日に食べた料理、旅先でのレストラン、プレゼントなど、けっこう細かい描写があり、私はああいうのが好きです。ふーんそういうのもあるのか、と勉強になりますね。でもこの本は何よりも「愛情」ということを教えてくれますんね
Posted by ダイアン・Mダイアン・M at 2009年03月03日 23:30
 
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