家族の記録「エンディングノート」

2012年02月06日


 10日ほど前、1月の下旬、「エンディングノート」を桜坂劇場で見てきました。
 砂田麻美さんという若い女性の監督第一回作品。実の父親が、がんと宣告され、亡くなるまでの日々を追っています。
 残された日々に、死にいたるまでやり残したことをこなすために「段取りよく」するために書かれたのが「エンディングノート」です。

 主人公の砂田知明さんは、1942年生まれ。団塊世代のちょっと前の人で、日本の高度成長期も知っているし、80年代のバブリーな時期、そして、自身の会社生活後半となる日本経済が停滞していった「失われた10年」も経験しています。
 「仕事人間」ではあるけれど、残された家族のヴィデオには、子供たちと楽しく遊ぶ砂田さんも映っており、家庭も大切にする人だったということをうかがわせます。それだからこそ、父親の病気を知って、家族が一丸となって支えていったのでしょう。

 決してお涙ちょうだいではなく、普通の毎日が流れていきます。その中で、砂田さんは「死」への準備、娘の麻美さんはそれをたんたんとカメラに収めます。がんを宣告された当時の丸々ふとった砂田さんと、数か月後のやせて10歳も老けた砂田さん。とても同じ人とは(しかも短期間で)思えません。
 麻美さんは、上のきょうだいたちと年が離れていたため、特にお父様と仲がよかったそうです。「父が出張にいっちゃうとさみしくてしょうがなかった」ほど(インタビューで話していました)。そんな最愛のお父様の最後を、「映画監督」として向き合っています。
 
 砂田さんの94歳になるお母様がお元気(知的でしゃきっとしていらっしゃる)で、彼女と最後の旅行に行ったときに、「葬儀は、教会でやりたいけど、いいか?」と聞き、母親は「あなたがいいんだったらいいんじゃない」と、事務的だけど、いろんな思いがつまってったんでしょうね。
 麻美さんは、幼いころから映像を撮るのが好きだったらしく、1998年に亡くなった砂田さんのお父様の姿もとっています。すでに認知症になっていて、自分がかつて経営していた医院を歩きまわっているのですが、「映像ってすごいな」と思いました。一般の人の記録だけによけいそう感じました。

 2009年に撮られた記録で、鳩山由起夫の顔がアップの「政権交代」と書かれたポスターの前を通って投票に行く映像もあります。あー、今の日本の状態を見るとずっと昔のことのようですが、あれから2年半しかたっていないんですよ。その年末に砂田さんは人生を終えますが、今の日本を天上からどう見ているでしょうか。

 アメリカに滞在している息子さん一家も出てきますが、砂田さんが初孫さんと声を出して笑っているところはほんとに楽しそう。彼への最高の贈り物でしょうね(この息子、市川亀次郎にそっくり)。

 桜坂劇場で、3月2日までやっています。「死」と「家族」について考えさせられた映画でした。




 

 
 


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Posted by ダイアン・M at 10:52│Comments(0)映画
 
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